79話 「私を傷つけた!」

毒親語録
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母には昔からよくわからない地雷がたくさんありました。
「たくさんすぎてよくわからない」と言った方がいいかもしれません。

いつも会話しているといきなり怒り出すので幼かった頃の私なんかは戸惑ってばかりでしたが・・
その地雷のポイントというのは自分が成長するにつれて少しずつわかるようにはなりました。

私が記憶している中で最初に戸惑いを感じたのが、母の顔の古傷について当時小学生だった私が質問した時でした。

母には眉間に小さな“溝”みたいのがあります。
・・と言ってもほんとによく見なければわからない程度ですが・・

その溝について私は何気に質問したのです。
「それ何?」

・・・
母はじっと黙って向こうを向いています。

私は『聞こえなかったのかな?』と思いもう一度質問しました。
「ねえ、それ何?」

・・と、みるみる不機嫌な表情になっていく母。
「うるさい。昔の傷だよ。」

気になったので子供だった私は無邪気に質問を続けました。
「傷って何?何してできたの?」

・・が、その時です。
母が急にものすごい剣幕で怒り出しました。

「この子は!!しつこい!!そういうことを平気で言う底意地の悪い子だ!!!」

・・・
私はびっくりしました。
ちょっとわけがわかりませんでしたが、何かが母の逆鱗に触れたことは明らかなので私は怖くなってそれ以上何かを言うのをやめました。

まあ大人になってから考えると簡単なことで、母は気にしていた顔の傷のことを言われて傷ついたのでしょう。
・・と言っても子供の私には全く分かっていませんでしたが・・
母はその時自分の気持ちを私に伝えるでもなく、「人の気にしていそうなことは言わない方がいいんだよ」、みたいな道徳的なことを私に諭したりすることもその後一切ありませんでした。

・・なので結局私はその状態の意味が一体どういうことなのかわからないまま子供時代を過ごしたわけですが、それ以上何かを言ったら怒られるということだけはなんとなくわかりましたので、それ以降そのことには一切触れず母に質問することもありませんでした。

たぶん母の頭の中には『子供に道徳的なことを教えよう』という方向性の発想はなく『意地悪な子供に傷つけられた』という悲しく悔しい思いがいっぱいだったのだと思います。
・・まだ未熟である子供に親である自分が“教育”をし、立派な大人に育てていく、なんて発想は母にはミジンコもなかったのです。

自分が大人になり切れていなく未熟なまま子供を育てるということは、常にこういう自己中心的な発想で子供に接してしまうことになるんじゃないかなとも思います・・・。
子供の無邪気な言葉にいちいち勝手な意味をつけて怒ったり傷けられていたのではそりゃ精神的に参ってしまうことでしょう。
“自分に気を遣ってくれない意地悪な子供”という目で子供を見、それでも“自己犠牲”をして育てなきゃならない義務感に日々追われているんだとしたら、そんな被害者意識満載で日々を送っているんだとしたら、こんな辛いことはないでしょうね・・・。

あと一つ例をあげますが・・
大人になってからはもっとわかりにくかったことがあります。

母は一度店を建て替えたのですが、
ちょうどその建て替え時期にも働いていた私は、新しい店が出来上がった直後出勤した時に激しい目の痛みに襲われます。

自分なりに悩みよくよく調べてみた結果、どうやらシックハウス症候群ではないかということがわかりました。
どうにも目のシパシパが治まらないので母に、
「どうもシックハウスっぽい」という旨を伝えたところ例のごとく噴火されました(笑)

「何て酷いこと言い出すんだこの子は!!!この店を私がどんな気持ちで、どんだけ苦労して作ったか知ってるんか!!!その気持ちがお前にわかるか!!!そんな大事な店を悪く言うなんてほんっとにクソ意地が悪い女だ!!!」

・・とまあ、もうほんとに激怒です。
私は予想外の展開にポカーン・・・というより目が痛く涙が止まらないのは事実、まず店のこと云々よりかも自分の体調(笑)、仕事に支障が出るし黙っているわけにもいかなかったので、もう母が怒ろうが『しょうがないよな;』という気持ちで自分なりに換気に気を付けたりいろいろ工夫をしてシックハウスの原因が抜けきるまでの数か月頑張ってみたりなんだりしたものですが・・・。
まあ、その時はそんな安直な対策方法で解決したから良かったものの、
やはり解決しなきゃならない問題に対して「“私が”傷つけられた!」と明後日の方向に怒りだす母をどうにも幼稚だと思ってしまった私がいたのでした・・・。

とにかくそんな感じでいつもいつもことごとく言葉が思ったように伝わらなかったり、全く違った方向で受け取られていきなり激怒されることがあまりにも多かったので、私としてはほんとうに母と会話をすること自体が億劫でたまらなくなっていました。
・・当然会話も減るし、意思疎通はできなくなる一方・・。

人間関係、例え誰が相手でも言わなきゃ何も伝わらない、
私のその考えは変わりません。
でも、言ったところで伝わらない・・どころか戦いになるような相手には、まだ“言わない”選択の方がマシになってしまうよなぁと・・今でもいろいろと考えてしまう私がいます。

伝わらない・・というか“受け取ろうとしない”相手とは、やはり距離を置くより他の良策は未だ見つかっていません(笑)

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