47話 毒子の生い立ち 7(裏口入学?)

毒子の生い立ち
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前の記事のつづき)

電車に乗って東京の親戚の家へ。

母はそのおじさんの好物だという〇〇屋の高級カステラを2万円分も買い込み、手土産として用意しました。
私はなんだかどういう心持でいいのかわからないような複雑な心境で電車に乗っていたのを覚えています。

そして到着。
親戚の家は高層マンションにありました。
何階かに上がって行きインターホンを押すと、程なくしてかなり昔におばあちゃんの家で会ったことのあるおばさんが出てきました。
『ああ、この人か。』
顔だけは覚えていました。

その後部屋で待っていた“偉い人”と会い、母が大学の件を頼み込みます。

・・しかし、返ってきた返事はこうでした。
「正直ご期待に沿える可能性はかなり低いです・・。昔はそういうのもあったのですが今はけっこういろいろと厳しくて、口利きと言っても、例えば同じくらいの点数でどちらかを選ぶ・・といった場合に有利にできるくらいな力しか私にはないんですよね・・。」

「ええー!」と、驚いた母でしたが、
「ではお金を払ったとしてもそういうのは無理ということなんですか?」となんとか少しでもその人にどうにかしてもらおうと必死に食い下がります。

「わざわざ来ていただいて申し訳ないのですが・・。」
おじさんもきまりが悪そうでした。

そんなこんなであまり手応えのある面会ではなく、母はがっくり肩を落とし、とりあえず買った高級カステラだけ渡して
「なんとか、少しでも有利になるようにできるだけでいいですのでご協力をお願い致します。よろしくお願い致します。」と何度も頭を下げてその日は帰ることになりました。

帰りに母が言いました。
「せっかく2万もする高級カステラ持ってったのに、力がないんじゃ損しただけじゃないか。こんな遠くまで来たのに!」

とはいえ口添えがあれば少しでも違うんではないかと母はまだ淡い期待を捨ててはいませんでした。
「2万もするカステラやってきたんだから。」というのが母の中では大きかったようです(笑)

私の方は、とりあえずその大学への推薦を担任の先生にお願いしなければなりませんでした。
持ち上げてもらうにもまず推薦で受けないとダメだということで。

しかし当然そんな大学に行く実力もない私の突然の推薦依頼・・
先生は怪訝そうに「なんでこの大学?かん子の成績を提出しても推薦のラインにはほんとにギリギリだぞ?今から勉強するなら推薦でなく一般の入試で普通に受験した方がいいんじゃないか?」と言ってきました。
推薦入試は小論文と面接ですが、今までの成績等を大学側に提出するので頑張って来なかった私の成績ではとても不利なのは目に見えています。
・・いえ、そんなことは分かっていました(笑)
しかしとにかく推薦をもらわなりません。
私はとても後ろめたい嫌な気持ちで必死に先生にお願いしていました。

母は急遽私を小論文の特訓のために塾に通わせます。
そしてそこで約一ヵ月程小論文を勉強し、私は母に連れられてその大学を受験しに行くのです。(推薦入試なので秋でした)

受験当日、私は緊張から家に忘れ物をしました。(受験票だかなんだかを)
幸い気づいたのが電車に乗る前だったから良かったのですが・・
母は激怒です。
「お前は自分のこともちゃんとできないのか!全部私にやってもらって、電車の段取りまでしてもらって、ここまでやってもらってんのに忘れ物するなんて意識がなってない!そもそも最初っから・・・」延々;
母の怒りは止まりませんでした。
優等生でいれば何の心配もなくスムーズに受験でもなんでもできたはずなのがこんな手間取らせて・・みたいなことで、たぶん母の怒りや不安もずっと溜まっていたのでしょう・・。
それがここへ来て一気に爆発した感じです。

私は怒られ倒して泣きながら電車に揺られ試験会場へと向かいました。
横では母がすごい剣幕で座っています。
前に座っていた乗客が『何事か』という風にチラチラとこちらを見ていました(笑)

それから無事会場へ着き、受験は滞りなく終わりましたが・・
自信があるかというと・・全くありませんでした(笑)
小論文はなんとか書けたものの、面接は緊張して正直何を喋ったのかよく覚えていません;

苦笑いで会場から出て来た私を見て母は
『この子は笑っているから大丈夫だ!』と思ったそうです。

そして何日かして来た結果は・・
まあ、× でした。

母はしばらく失望して怒っていましたがすぐさま他の大学を探し始めます。

私はとにかく家を出たかったので(笑)東京の短大やらを探しましたが、母は家のすぐ近くに新しくできた〇〇女子短大の願書をもらって来て私に渡しました。
・・といっても文系です;
「私、国語とかこの一年あんまり勉強して来なかったんだけど・・」と言うと
「大丈夫でしょ。ここ偏差値低いし受かるから受けな。英文科がいいんじゃない?英語はこれからの時代何かと使えないとだめでしょ。」と一掃されました。

それに、この間母はいろいろと考えたようです。
近所の短大に通わせて、その間店の手伝いをさせながら美容師の免許を取らせる、
学歴を付けた後に美容師にさせればいい・・・と。

とにかく家から離れたかった私は焦りました。
が、「考えてみたら一人暮らしでアパート借りるなんてもったいないことしないで家から通えるところに行った方がいい。店だって手伝えるがね。その分お金貯めて他で使った方がいい。何もムダ金使うことない。」ということでした。

そしてまたお客さんを交えた『説得』です(笑)
とにかく母は、私が遠くの学校を受けようとしていることがどれだけ無駄でばかばかしいことなのかということをお客さんと一緒になって私に言い聞かせました。

そんなこんなで私は、受けようとしていた他の短大等を諦め、その近所の短大一本に絞ることになります。
推薦で落ちた○○大学の一般入試を受けるのももちろん辞めました。

近所の〇〇短大は偏差値が低いというだけあり確かに簡単な入試問題・・。
私は難なく英文科に合格し、その短大に進学することになります。
と、同時に、母が言っていた通り美容学校の通信過程も始めることになりました。東京にある美容学校の通信課程です。(それも母が探して願書をもらってきました)

・・・一体私はどこへ行ってしまうのでしょう・・・(笑)

(つづく)

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