43話 毒子の生い立ち 3(学区が違う学校、親が違うこと)

毒子の生い立ち
スポンサーリンク

前の記事のつづき)

当時私にはいろいろ隠さなければならない秘密がありました。(あると思っていました)
そしてその隠し事をしていることがとても後ろめたく、なにかずっと自分は悪い事をしているような気持ちでいたのを覚えています。
・・とにかくいつも周りにビクビク、オドオドして小さくなっている子供でした。

ちなみに『秘密』というのは、『普通じゃないこと』全てです。
『普通じゃないこと』『周りと違うこと』は悪いこと、恥ずかしいことなので黙っていなければならないという認識が私の中にありました。

その普通じゃないことの一つは、やはり母が一度離婚して、今の父が私の本当の父でないということです。
これは母もタブーにしていましたし、私が少しでもそのことに触れようとすれば「かん子!」と言ってキッと鋭い目で睨まれましたので、『言ってはいけないこと』なのだということはすぐに分かりました。

母も『再婚』ということを“恥ずかしいこと”と思っていたようで絶対に人に言うことはなく、偶然そういう話題になったりした時には嘘をついていました。

例えば、お客さんに私が「かん子ちゃんはお母さんには似てないわよねえ?お父さんに似ているの?」と言われると、母はすかさず
「うーん、お父さんにもあんまり似てないかなぁ。弟の方はお父さんそっくりなんだけどね。」というふうに答えます。

私の頭の中は最初は『???』でした・・
もちろん本当の父ではないので似ているわけはないのですが、なぜか母はそのことを絶対に説明せずお客さんに話を合わせました。
・・なんというか、、『めんどくさいから適当に合わせている』といった雰囲気でもなく、気まずそうに目を泳がせながら話すので明らかに『隠している』ことが伺えました。

・・私はそんな母の受け答えを最初のうちは不思議に思っていたのですが、そのうちに『ああ、言っちゃいけないことなんだ。』と気づき、私も本当の事は隠さなければならないんだと思うようになりました。
しかしあからさまな嘘を言わなければならないことが毎回後ろめたく、なんか口がモゴモゴして上手く喋れないことが常だったのを覚えています。
学校でも『父の話題にだけはならないように』といつもビクビクしていました。

それからもう一つ、私にとってのとても大きな隠し事がありました。
今思うと大したことではないのですが、その時はとても『悪いことをしている』のだと思っていた記憶があります。
それは私の家がその小学校の学区内の町内ではないということです。

当時母は、母の友人の娘さん(私と同じ歳のYちゃん)がその小学校だということを知り、学区内に家がある親戚の人から住所を借りて、私をYちゃんと同じ小学校に入学させたのです。
なので私はその小学校の学区内ではない地区から、近くの学区内の町内の班に入れてもらう形で通うことになりました。
もちろん学校の先生にはそういうことで母が話を付けていたので問題はなかったのですが・・
私はこのことを『悪いことをしているのだから友達に秘密にしておかなければならない』と思っていました。

なので、「どこの町内?」と聞かれてもいつもモゴモゴして答えられなくなってしまい、
町内の集まりともなれば、もうそこに居ていいのか悪いのかわからないような感じで端っこの方に申し訳なさげに小さくなっていました。
私にとってはその小学校に居ること自体がもう罪悪感で後ろめたくてしかたなかったという記憶があります。

・・しかし母はというと、そんな私の複雑な心境などもちろん知る由もなく、
「知ってる子と同じ小学校に入れてやったのだからかん子のことは安心。」と、美容師の仕事に専念していました。

というかむしろ「子供のことを考えてここまでやってあげる私はすごく出来た親」といったニュアンスでしょうか・・
母は常に、全てのことをパーフェクトに手配しているのだということを自負してる様子でした。

(つづく)

タイトルとURLをコピーしました