(前の記事のつづき)
もともと最初から母はこの結婚には反対でした。
旦那さんが私の実家に初めて挨拶に来た時から良く思っていなく(自分の持つ常識と違うことを感じたのでしょう)、
両家の顔合わせの時にそれは母の確信に変わりました。
顔合わせの次の日に、向こうの実家に「この結婚はなかったことに」との連絡を入れた母。
それで全ては終わりにできると思っていたようです。
ところが私は言う事をききませんでした・・。
これはなんというか・・説明するのが難しいのですが、
私の自分の強い意志、という立派なものではなくたぶん・・旦那さんへの責任感だと思います・・・。
それがとても大きかったので、結果的に『母への反発』という形になり、
後に母に「かん子は私に反発するのが目的であんな男と結婚したんだ」と言われ続けることになりますが・・
私としては反発するつもりも何も、そんなことを考えている余裕もなかったというのが正直なところです。
母が行動を起こした時の私は実はパニック状態で、頭の中はものすごく混沌としていました。
自分の判断で対処しようとしていたというよりも、
何かいろんなことへの責任感とか義務感とか罪悪感の巨大な波が押し寄せて来て、
それに押し流されながらその都度行き当たりばったりの行動をしていたような感覚だったと思います。
どうしたらよいのかが全くわからなくなり、ただただ『今やらなきゃいけない』事を必死にやっていました。
正直『自分の気持ち』というのは後回し・・というよりか、無いに等しい状態でした。(それはいつもでしたが)
どうしたらこの事態を丸く収めることができるか、両方に対して良いようにできるか・・・
何ヵ月か結婚して、ほとぼりが冷めた頃離婚すればどっちにも顔向けできるか・・とかのとても正気とは思えない考えまで浮かんで来ていたのを覚えています。
後から考えると全て『自分がどうしたら悪く思われないか』の保身的思考でしかないですね(汗)
呆れます。
母はというと、まさかそれまで本当の意味で母に逆らったことのなかった私がこんな大事な事を押し切って行動するとは思っていなく、
私のこの裏切りとも言える行動にものすごい苦しみを味わって体調を崩した程でした。
「かん子が言う事をきかなくなった!いくら言ってもわからない!」
これは後からいろいろな人から聞いて分かったことですが、
・・私のいないところで散々いろんな人に、大騒ぎをして相談していたそうです。
親戚、お客さん、店の材料屋さん、農協さん、占い師・・・いろいろです;
それまで母はずっと自分の人生を自分自身の手によって切り開いてきました。
「なんでも自分で頑張ればどうにでもなる。」「思うようにならないことは何もなかった。」とよく言っています。
特にバブル時代のがむしゃらな頑張りによりお金を得てからは更に母の周りの全ての人が(といっても小さな世界ですが)母に従うようになっていました。
何か困難なことがあっても、自分がとにかくがむしゃらに行動する事で殆どの事を思った通りに動かしてきた母、
煩わしい姑がいた前の旦那さんと早々と離婚して家を飛び出して以来、
大人しい今の父と再婚したこともあり、言う事をきかない人は本当に誰も母の周りにはいませんでした。
・・そんな母がここへ来て、どうにも思い通りにならないことが出て来たことへのストレスは気がおかしくなる程だったのだと思います。
取り乱して大騒ぎする母に戸惑いと罪悪感を覚えつつ、
母が言った「こんなことなら子供を自分のお腹に戻したい!」という言葉に、なぜだか私はとてもゾッとするような感覚になったのを覚えています。
そんな風に大反対を押し切ってした結婚ですので、
母はそれからずっと反対し続けることになりました。
もう
「いつになったら離婚する気になるの?離婚するならなるべく早いうちの方がいんだからね?」
「ほんとにずっと言ってるのに言う事きかない。」
は口癖になっていました。
「離婚してお前と孫だけになればお金の援助だってしてやれるんだから。もっと優雅にのんびり暮らせるんだから。」ということも散々言われました。
例え店のお客さんの前であろうと平気でそれを言い続け、時にはお客さんに同意を求め、お客さんと一緒になって私に言うことも珍しいことではありませんでした。
本当に、言う通りにしない私に対する苛立ちはもの凄いものがあったようで、仕舞いには
「早くしないと親だって年老いるんだからね!そうしたらお金だって出せなくなるんだから!」という脅しに変わっていきました。
それでも、離婚をしようとしない私と縁を切るという頭は母にはなかったようです。
「旦那との結婚は反対だけど、娘と孫がかわいいからいろいろやってやるんだからね。」ということで、
いろいろと思いついたことをやってくれたりだとか、足りないと思うものを買ってくれたりだとか、
こちらが頼むことではなく母側の思いつきや都合でではありますが、ちょくちょく世話をやいてくれていました。
私はというと、昔からそうして来たように、母のやる事は有難いと思うこともそうでないことも、
いちいちそれについて深く考えずに受け入れていました。
というか、幼い頃から選択権のあまりなかった私にとっては大概のことがこだわりもなく『なんでもいい』感じでしたので、
拒否したことで空気が悪くなる事の方が面倒という気持ちが強かったように思います。
そしてどこかで『母のやることなのだから正しいのだろう』という思いも無意識に心の中にあって、安心していたのだと思います。
なので結果的に、家庭内には母がどんどん介入してくるといった形になっていました・・。
家の場所は違っても、まるで私の実家に入って一緒に暮らしているかのような感じです。
私はその状態を、何の疑いもなく受け入れていました。
母は昔から、何かをやってくれる時には同時に「お前はほんとにダメで一人じゃなんにもできない。」「私がやってやってる。」「感謝しなさい。」と言う言葉を口にします。
さすがにそれを聞く度になんとも言えないモヤっとした悔しいような気持ちが心の奥に沸き起こるのは感じていましたが、
それもひっくるめて全て、私にとっては『当たり前』で『仕方ない』ことという感覚でした。
私は自分のことをその通り『なんにもできない自分』だと思い込んでいたところもありますので、当然のことなんだという気持ちがあったのかもしれません・・・。
自分という人間は、いつまでも子供で、無力で、無能で、どうしょうもないダメ人間と、心の奥底で無意識に信じていたのだと思います。
(そう言われ続けて育ったのですから当たり前の事ではありますが)
そんな劣等感の塊のような人間が、自分の意志で物事を判断する自信があるわけもありません。
私の判断は常に『間違っている』気がするのです。
だから何をするにしても自分で選ぶのが怖いのです・・・。
そうは言っても時にはその時の強い感情や勢いで選んで突っ走っろうとする時もありました。
しかし後から必ず、どうしようもない不安と、許可を得ないで選んでしまったという罪悪感が押し寄せて来ます。
・・よって、何か言われればすぐに不安になって自分を疑い始め、心が折れるのは早いです(笑)
本当に絵に描いたようなグズグズのダメダメうんこ人間。
とにかく、そういう母との関係性や、自分のダメさ加減など全部が私にとっての『普通』でした。
昔からずっと何事においてもそのようで、
母の指示には、それが嫌なことだったとしても違うと思った事だとしても、大概は苦笑いをしたり下を向いたりして黙って従いました。
例え、勢いと勇気を持って母を振り切り自分の道を選ぼうとしても、結局は不安と罪悪感に耐えきれず、心折れて母の元へ戻ります・・。
その繰り返しでした。
繰り返す自分に内心うんざりもしていましたし、ますます自分の弱さを自覚し、自己のイメージはどんどんうんこになっていきました。
そんな私ですので、母に反対されている結婚生活を続けていることは、ほんとうに不安と罪悪感の渦の中にいるようなどうしようもない心境でした。
なにかずっと『しなければいけないことをいつまでもやらずに胡麻化している』ような、
常に焦燥感に駆り立てられているような不安定な感覚で日々を過ごし、
そんな中で『離婚について言うことを聞いていないにも関わらず、母のしてくれることを拒否することなく受け取り続ける』という矛盾を抱え、
それに対する罪悪感はどんどん大きくなっていきました。
・・でも結局は自分一人のことではないのでどうすることもできず、
ほんとうに複雑で後ろめたく追いつめられたような気持ちで、私は常に晴れない顔で毎日の生活を送っていました。
・・いえ、考えてみると、もしかしたらそれ以前もずっと、
ずっとずっと昔から、私は晴れた顔などしたことはなかったような気もします。
なぜかいつも、何をするにも、必ず同じような心境になる状況に陥ってしまうことばかりでした。
私はそれを漠然と『運命』のようなものだと思っていましたが・・
それは単に、自分の中にある習慣や思い癖が引き起こしていた現象にすぎなかったのだと今では思います。
だからどこへ行っても、何をやっても、結局全て同じような結果になるのです・・・。
そうなるように行動してしまっていたのですから当然です。
そうなるように自分を追い込んでしまっていたのはいつも自分でした。
結婚についても何についても言えることですが、
『決断』とは、最初に自分の決意や覚悟ありきでするものです。
その決断をする自分を信じることができていなかったら、その後小さな事にも心揺らぐのは当然のことなのです。
・・だから本当は、人として、自分で決断することができない段階であるなら結婚などするべきではないのです。
流されて決めたことには後々自分で責任を持つのが困難になってくる事も多いです。
特に結婚は他人を巻き込むことなのでなお更よく考えなければなりません。
自分の未熟さのために他人の人生まで狂わせかねないのです・・。
まして自分が生む子供の人生まで狂わせることになってしまっては取返しがつきません。
私はいつも、何かを決める時には『こうしなきゃならないからやる』という基準で決めていました。
『迷惑をかけてしまうから』とか『やれって言われたから』とか『やらないと怒られるから』とかです。
結婚したのもいわば
『誰に何と言われようが、どうなろうがやって行く!』などという強い意志はどこにもなく、
『ここまで来て破談になったら旦那さんに悪いから』という気持ちが最も強く
『しないわけにはいかない』という強い義務感のような感情で押し切ったようなものです。
そして決断したものの、結局自分の軸がないので周りのいろんなことにフラフラ惑わされ、悩み続けました。
いつも思っていたのは、
『これで良かったんだろうか』
『誰の言うことを聞いたらいいんだろう』
『何が正しいんだろう』
『どうしたら正解なのか誰か教えて』
でした。
先に書いた通り、旦那さんのことは確固たる覚悟を持って『選んだ』わけではなかった私です・・。
『責任感』で流されたという状態、いわば『受け身』の状態なので、貫き通せる自信があったわけでもなく、
母に何か言われれば『私が間違っていたのかも』と不安になったり、旦那さんが理想と違った行動をする度に『離婚した方がいいのかも』
と思ったり、私の心は常に揺れまくっていました。
そんな私の心は、どんな状況にも関わらずいつもいつも不安定でした。
『これでいい』と思うことがなく常に悩み続けるので、未来に希望を持つ余裕もありません。
当然幸せであるわけがありませんでした。